葛飾北斎の人気作『北斎漫画』を無料で閲覧したり、画像を自由に使いたい――。そんな方のために、この記事ではネット上で公開されている『北斎漫画』画像を商用利用含めて自由に利用できる、信頼性の高いデジタルアーカイブを網羅的に紹介します。
膨大な情報から迷わずたどり着けるよう、用途や目的に応じたおすすめサイトと、効率よく閲覧・ダウンロードできる手順をわかりやすく整理しました。この記事ひとつで、『北斎漫画』の画像探しから活用まで、スムーズに楽しむための手引きになっています。
作品の解説や基本情報が知りたい方は、こちらの記事「【『北斎漫画』入門】葛飾北斎が描いた「現代マンガ」のルーツと魅力を解説」をあわせてご覧ください。
1.まずはここ!全編が揃う「国立国会図書館」
最初におすすめしたいのは、日本最大の蔵書を誇る「国立国会図書館」のデジタルコレクションです。
国立国会図書館は、日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存することを定めた日本唯一の「法定納本図書館」として知られています。そのため、歴史的な書物から近代の書籍まで幅広く所蔵し、著作権の切れたパブリックドメイン作品を「国立国会図書館デジタルコレクション」としてオンラインで公開しています。
作品の公開範囲が「インターネット公開(保護期間満了)」と表示されているものは、出典を明記するだけで商用利用を含め自由に使えるのが大きな特徴です。『北斎漫画』もその対象で、全巻・全ページがデジタル化され、画像データとして閲覧・ダウンロード可能です。
「国立国会図書館デジタルコレクション」の特徴と注意点
メリット
「『北斎漫画』を探すなら、まずはここから」と言える理由は、大きく分けて次の3つです。
- 『北斎漫画』の画像が全編・全ページ揃っている
- 作品画像を探しやすく、閲覧しやすい
- 出典を記載すれば、商用利用も含めて自由に使用できる
一見すると「デジタルアーカイブなら他も同じでは?」と思うかもしれません。しかし実際に使い比べてみると、この3つの点で国立国会図書館は頭ひとつ抜けています。
たとえば Google で「北斎漫画 データベース」と検索すると、国内の図書館や研究機関などが公開しているアーカイブがいくつも見つかります。しかしその多くは閲覧専用で、無断転載禁止。自由に利用できる画像は意外と少ないのです。
さらに「探しやすさ・閲覧しやすさ」も大きな魅力です。のちほど「『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順」で詳しく説明しますが、たとえばアーカイブ内で「北斎漫画 1編」の作品をクリックすると、書籍の全ページが画像として一覧表示され、ページをめくらなくても内容を一望できます。これは国立国会図書館デジタルコレクションならではの利便性です。
このように、数ある国内のデジタルアーカイブの中でも、国立国会図書館は信頼性・使いやすさ・自由度の三拍子が揃った非常に貴重な存在といえるでしょう。
デメリット
もちろん、国立国会図書館だけで完結しない理由もあります。実際に『北斎漫画』を紹介しているウェブ記事を見ても、国立国会図書館の画像が使われている例は意外と少ないのが現状です。その大きな理由は次のとおりです。
- 画像の色味がモノクロ調
- 公開目的で利用する場合、ビジュアル面でやや見劣りする
実際の比較例として、ここでは3種類の画像を用意しました。
1つ目は国立国会図書館でダウンロードしたもの、2つ目はその画像をトリミングして整えたもの、3つ目は他のアーカイブから入手できる一般的な彩色ありの画像です。
国立国会図書館でダウンロードした画像(加工なし)

出典:葛飾北斎『北斎漫画』1編、国立国会図書館
https://dl.ndl.go.jp/pid/851646/1/8
トリミングして整えた画像

他サイトの彩色あり画像

出典:葛飾北斎『北斎漫画』、メトロポリタン美術館
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/78791
この違いを見比べて、自らの目的に国会図書館の画像が向いているか判断してみてください。
ただし、他のアーカイブを利用する場合でも、国立国会図書館の「全ページが一覧表示される利便性」は非常に役立ちます。まず国会図書館で作品全体を確認し、使いたい絵柄に目星をつけてから、別のアーカイブでダウンロード用の画像を探す――そんな使い方がおすすめです。
つまり、全編揃っていて閲覧性に優れているからこそ、最初に立ち寄るべきサイトが国立国会図書館なのです。
『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順
では実際に、「国立国会図書館デジタルコレクション」で『北斎漫画』の作品画像を利用する手順を確認してみましょう。流れはとてもシンプルで、大きくは次の4ステップです。
- 「国立国会図書館デジタルコレクション」にアクセス
- 検索窓に「北斎漫画」と入力
- 全十五編の中から目的の作品をクリック
- 利用したい画像を選び、出典を明記すれば利用OK
ただし、実際に使う際には、操作で迷いやすいポイントもあるかもしれません。そこで次に、実際の画面も見ながら、より詳しい手順を解説していきます。
①「国立国会図書館デジタルコレクション」のトップページを開きます。
https://dl.ndl.go.jp/
②検索窓で「北斎漫画」と検索します。
すると、本の一覧が表示されます。
本の一覧の右上のフィルターで「出版日:古い順」が選択されていれば、上から6冊目くらいから先、「北斎漫画」の初編から十五編までずらりと一覧が出てきます。
見づらいと感じた場合は、一覧画面の上部にある詳細検索から「タイトル」の箇所で再び「北斎漫画」と検索すると、一覧の1冊目から表示されるので、より見やすくなります。

③一覧から、閲覧したい本をクリックします。
たとえば「北斎漫画 1編」をクリックすると、その本すべてのページが画像として一覧表示されます。

ページをめくらずに、全ページが一覧で見られるのは、国立国会図書館デジタルコレクションならではです。
④使用したいページの画像をクリックします。
すると、該当の画像が画面左に拡大表示されます。
⑤画像情報を確認し、ダウンロードします。
使用したいページの画像が拡大表示されている状態で、ページをそのまま下にスクロールすると、その画像の情報が記載されています。

- 左側に書籍情報、右側に共有のための情報として「インターネット公開(保護期間満了)」の記述があります。
- 共有情報の中の「コンテンツの転載について」をクリックすると、ダウンロードして使用する場合のクレジット表記のルールが書かれています。
- 共有情報の中にクレジットの記載例や該当ページのURLが記載され、その下にダウンロードボタンがあります。
ダウンロードの際は、ファイル形式、解像度などの選択ができます。特別なこだわりが無ければ、そのままダウンロードボタンを押すと、JPGのきれいな画像がダウンロードできます。
⑥クレジット(出典)を記載して、画像を使用します。
2.非営利なら自由に楽しめる!豊富な北斎作品が揃う「大英博物館」
「国立国会図書館は便利だけれど、もっと見栄えのする画像がいい!」――そんな場合に最初におすすめするのが、『北斎漫画』の豊富なラインナップと良質な画像データを揃えた「大英博物館コレクション」 です。
イギリス・ロンドンにある大英博物館は、複数のコレクターから入手した世界でもトップクラスの優良な葛飾北斎コレクションを多数所蔵しています。2022年には東京のサントリー美術館で、大英博物館が所蔵する北斎作品を中心にした展覧会「大英博物館 北斎―国内の肉筆画の名品とともに―」が開催されました。
大英博物館は館内展示だけでなく、「大英博物館コレクション」としてデジタルアーカイブを公開しており、誰でも自由に閲覧可能です。著作権が消滅したパブリックドメイン作品は、自由にダウンロードできるようになっています。
「大英博物館コレクション」の特徴と注意点
メリット
「大英博物館コレクション」の魅力は、大きくわけて次の4つが挙げられます。
- 『北斎漫画』全十五編のうち十四編が揃っている(※十三編のみ未収蔵)
- 古書特有の紙の劣化はあるものの、絵の画像が非常に良質
- 多くの版がある『北斎漫画』の中で、他ではあまり見られない版も所蔵
- 『北斎漫画』以外にも、北斎の代表作『富嶽三十六景』など、有名な浮世絵作品から未発表版下絵まで北斎コレクションが多数揃っている
世界屈指の北斎コレクションを誇る博物館だけあり、良質な作品画像とラインナップの充実度が大きな魅力です。
とくに『北斎漫画』は初版から200年以上にわたり、多くの版が刊行されてきました。大英博物館コレクションでは、たとえば次のような横型の『北斎漫画』も見ることができます。
https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1979-0305-0-473-D
『北斎漫画』を含めた世界屈指の北斎コレクションを、良質な画像で楽しめるのが大英博物館コレクションの最大の魅力といえるでしょう。
デメリット
大英博物館コレクションは非常に優れたアーカイブですが、利用にあたって注意すべき点もあります。
- 無断での商用利用は不可。
「CC BY-NC-SA 4.0(表示–非営利–継承)」ライセンスを提示しているため、非営利目的であれば許可なしで自由にダウンロード・利用できるが、商用利用には事前申請が必要。 - 『北斎漫画』十三編が未収蔵
最も注意すべきは、「無断での商用利用はNG」という点です。広告収入のあるYouTube動画やウェブサイトでの無断使用は、ライセンス違反となる可能性があるので気をつけましょう。
その他の注意点
デメリットとまでは言えませんが、探しやすさ・閲覧性に優れた国立国会図書館に比べると、「利用の手順」でいくつかポイントを押さえる必要があります。
サイトは英語表記ですが、自動翻訳で十分対応可能です。一方で作品の数が多いため、作品名の検索でも目当てのものが下のほうに埋もれてしまい、探しにくいのが難点です。しかし、「『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順」を確認してもらえば、問題なく画像を探してダウンロードすることができるはずです。
どの編のどのページに目当ての絵があるかは、国立国会図書館デジタルコレクションで先に確認しておくと効率的です。
大英博物館コレクションは、商用利用には制約があるため注意が必要ですが、非営利目的なら自由利用が可能で、十四編が揃う『北斎漫画』と、世界屈指の北斎作品もあわせて良質な画像で楽しめるのは大きな魅力です。総合的に見て非常におすすめできるアーカイブです。
『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順
では実際に、「大英博物館コレクション」で『北斎漫画』の作品画像を利用する手順を確認してみましょう。
大きな流れは、次の4ステップです。
- 「大英博物館コレクション」にアクセス
- 検索窓に「Hokusai manga」と入力
- 十五編の中から目的の作品をクリック
- 利用したい画像を選び、出典を明記すれば利用OK
ただし、実際に使う際には、ここから紹介する「利用の手順」を確認したほうがスムーズに画像を探せます。そこで実際の画面も見ながら、より詳しい手順を解説していきます。
①「大英博物館コレクション」のトップページを開きます。
https://www.britishmuseum.org/collection/
サイト上でマウスを右クリックして「日本語に翻訳」を選択すると、英語のサイトが自動翻訳で日本語になります。
②検索窓で「Hokusai manga」と検索します。
トップページ(日本語に翻訳した状態)

すると関連作品188件がヒットしますが、上部にずらりと出てくるのは北斎の未発表版下絵「万物絵本大全」ばかり(大英博物館は原画103点を所有)。『北斎漫画』が出てくるのは、検索一覧の2ページ目後半になります。
検索一覧の2ページ目後半

③一覧から、閲覧したい本をクリックします。
ここまでは一般的な探し方です。
とはいえ、初編から十五編までばらばらに並んだ中から探すのは少し手間がかかります。そこでURLから探す裏ワザも紹介します。
もっと簡単にURLで探す方法
『北斎漫画』は、URLの末尾の数字を1つ変えるだけで、各編を閲覧することができます。
初編:https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1979-0305-0-428-1
まず、このリンクを踏むと、初編の閲覧ページが開きます。
初編のURLの末尾の「1」を「2」に変えると、二編の閲覧ページが開きます。
二編:https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1979-0305-0-428-2
同じように末尾の数字を「3」にすると3編、「4」にすると4編が開きます。
しかし13編のみ未収蔵なので、「13」は14編、「14」は15編になります。
14編:https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1979-0305-0-428-13
15編:https://www.britishmuseum.org/collection/object/A_1979-0305-0-428-14
④使用したいページの画像をクリックします。
画面下にページをめくる機能があります。使用したい画像をクリックしたら、右下の「Use This image(=この画像を使用する)」を押します。

⑤画像情報を確認し、ダウンロードします。
画像ダウンロードページ

⑥クレジット(出典)を記載して、画像を使用します。
3.他サイトを補完!浮世絵利用で人気の「メトロポリタン美術館」
ネット上で公開された『北斎漫画』の画像の出典元としてよく見かけるのが、アメリカ・ニューヨークにある「メトロポリタン美術館」のコレクションです。
世界三大美術館のひとつに数えられるだけあり、日本の浮世絵コレクションも世界有数の規模を誇ります。葛飾北斎はもちろん、歌川広重、歌川国芳、喜多川歌麿といった人気浮世絵師の作品も幅広く収蔵しています。
さらにメトロポリタン美術館は、「The Met Collection」(メトロポリタン美術館コレクション)として、所蔵品の中からパブリックドメイン作品(著作権の保護期間が満了した作品)をデジタル化し、誰でも自由に利用できるようにデジタルアーカイブとして公開しています。
「北斎・広重の代表的な浮世絵作品を無料で利用できるアーカイブ」として広く活用されており、筆者もおすすめしている美術館サイトのひとつです。
「メトロポリタン美術館コレクション」の特徴と注意点
メリット
「商用利用できて、それなりに質の良い画像を使用したい!」――そんなニーズに応えてくれるアーカイブのひとつが、メトロポリタン美術館コレクションです。メリットとしては、大きく次の5つが挙げられます。
- ネット上で最も広く利用されている『北斎漫画』の出典先のひとつ
- 『北斎漫画』の画像が全編・全ページ揃っている(※ただし注意点あり)
- 発色はやや薄めだが、絵に彩色がある
- 他の有名な葛飾北斎作品も一緒に揃えられる
- 商用利用を含め自由に使用できる
メトロポリタン美術館コレクションは、所蔵の信頼性と画像利用の自由度が相まって、北斎作品や有名浮世絵作品のパブリックドメイン画像を利用する際、多くの人が最初に訪れるサイトです。その利用の延長で、『北斎漫画』もまずここで探す人が多いのではないかと思います。
こちらはメトロポリタン美術館コレクションでダウンロードした画像です。

出典:葛飾北斎『北斎漫画』十五編、メトロポリタン美術館
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/57390
デメリット
一方で、『北斎漫画』の利用に限って言えば、メトロポリタン美術館コレクションには大きな使いづらさがあります。主なデメリットは次の3点です。
- 一枚絵ではなく書籍扱いのため、閲覧性が非常に低い
- 「初編〜十五編」と全冊まとめられた大容量データから、1ページずつ探す必要がある(※全15編のうち、5編・6編・15編のみ1冊ごとの閲覧ページあり)
- サイトが重く、全編を通して画像を探すのは非効率的
筆者自身もこの不便さのため、最終的にメトロポリタン美術館コレクションの利用を断念しました。
浮世絵の単作品を探すには検索精度が高く非常に使いやすいですが、『北斎漫画』に関してはその強みがまったく活かせません。
実際の操作も難点があります。トップページで「Hokusai manga」と検索すると全編が表示されるものの、五編・六編・十五編以外は表紙まわりしかなく、中身が抜けた状態で公開されています。そこで全ページを閲覧するには「初編〜十五編」がまとめられたページを開く必要がありますが、15冊分が一括になっているためサイトが重く、ページ送りも不便です。さらに一度画像を開くと閲覧位置がリセットされ、初編冒頭からやり直さなくてはなりません。効率的で閲覧は極めて困難です。
この不便さは他の利用者も感じているようで、Wikipediaの「北斎漫画」のページでも、初編だけがメトロポリタン美術館の画像で、それ以降は他の所蔵先のものに頼っています。つまり『北斎漫画』利用の実用性は低く、基本的には他のアーカイブを優先するのがおすすめです。
おすすめの活用法
とはいえ、まったく使えないわけではありません。メトロポリタン美術館コレクションは、次のような用途に限定すれば役立ちます。
- 全編一括ページから、冒頭の初編のみを利用する
- 5編・6編・15編(例外的に1冊ごとの閲覧ページあり)を利用する
- 他のサイトにない画像を補完的に利用する
全編が揃い、商業利用も自由にできるアーカイブは貴重です。加えて、絵には彩色があり、画質も一定の水準を満たしています。他サイトの彩色画像と組み合わせても違和感が少ないため、補完的な利用には向いています。
したがって、どうしても他で見つからないページを補いたい場合の「最終手段」として活用するのが現実的でしょう。「5編・6編・15編の閲覧ページ」は、次の「検索・ダウンロード手順」でURL(リンク先)を紹介します。
『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順
メトロポリタン美術館コレクションの利用手順は、こちらの記事「浮世絵利用『メトロポリタン美術館』有名作品のダウンロード手順を解説」をご覧ください。さまざまな北斎コレクションを検索してダウンロードできます。
ここからは、『北斎漫画』に限定した手順についてです。
一般的な流れは、次の4ステップです。
サイト上でマウスを右クリックして「日本語に翻訳」を選択すると、英語のサイトが自動翻訳で日本語になります。
- 「メトロポリタン美術館コレクション」にアクセス
https://www.metmuseum.org/art/collection - 検索窓に「Hokusai manga」と入力
- 十五編の中から目的の作品をクリック
- 利用したい画像を選び、出典を明記すれば利用OK
しかし、「Hokusai manga」と検索すると全編が表示されるものの、五編・六編・十五編以外は表紙まわりしかなく、中身が抜けた状態で公開されています。どこで絵を見られるのか、検索一覧から目的のページを探すのは手間がかかるため、ここでは閲覧先URLを紹介します。
五編:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/57678
六編:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/78912
十五編:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/57390
初編 -十五編一括:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/78791
各リンク先から利用したい画像を選び、ダウンロードボタン(「↓」マーク)を押して、画像を保存します。
4.スムーズに彩色画像を入手!九編分が揃う「ハーバード大学図書館」
ここまでは、『北斎漫画』十五編ができるだけ揃うデジタルアーカイブを中心に紹介してきました。しかし実際には、「全編は必要ない」「一部の編が揃えば十分」といったニーズも少なくないでしょう。
そんなときに穴場的な存在としておすすめできるのが、アメリカにあるハーバード大学図書館です。
世界屈指の規模を誇るハーバード大学図書館は、蔵書数2000万冊以上を有する世界最大級の学術図書館のひとつです。その膨大なコレクションの中からパブリックドメイン作品を中心に公開しているのが「ハーバード大学図書館デジタルコレクション」(Harvard Library Digital Collections)です。
日本ではあまり知られていませんが、ここでは書籍や写本、浮世絵、地図、写真など多彩な資料がオンラインで閲覧でき、商用利用を含め自由に活用できます。
「ハーバード大学図書館デジタルコレクション」の特徴と注意点
「効率よく、彩色ありの画像を入手したい!」――そんなニーズに応えてくれるのが、ハーバード大学図書館デジタルコレクションです。メリットとしては、大きく次の5点が挙げられます。
- 『北斎漫画』全十五編のうち、九編分(2編、3編、4編、6編、7編、10編、11編、14編)が揃っている
- 九編分のリンク先一覧ページがあり、効率的に絵を探せる
- 紙の色味は経年劣化しているが、絵に彩色があり、鮮明で見やすい
- ダウンロード画像のサイズを4種類から選べる
- 商用利用を含め自由に使用できる
ハーバード大学図書館は、九編分に限って利用するなら非常に効率的です。特に便利なのが、このようなリンク先一覧ページがあることです。
https://listview.lib.harvard.edu/lists/drs-499504334
見たい編をクリックするだけで1冊ごとに絵を探せるため、余計な手間をかけずに、彩色ありの画像を素早く探してダウンロードできます。閲覧性も高く、実用性はかなり高いといえるでしょう。
こちらはハーバード大学図書館デジタルコレクションでダウンロードした画像です。

出典:葛飾北斎『北斎漫画』十一編、ハーバード大学図書館
https://iiif.lib.harvard.edu/manifests/view/drs:499486845$20i
デメリット
一方で、次のような欠点もあります。
- 6編分(1編、5編、8編、9編、12編、13編)が未収蔵
- 書物をスキャンしているため、裏側の絵がやや透けて見える
特に初編が未収蔵なのは残念な点です。とはいえ、『北斎漫画』の代表的な絵は初編以降に幅広く含まれています。収蔵されているラインナップで十分足りるなら、ハーバード大学図書館デジタルコレクションは他のアーカイブよりも快適に利用できる、おすすめのアーカイブです。
『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順
では実際に、「ハーバード大学図書館デジタルコレクション」で『北斎漫画』の作品画像を利用する手順を確認してみましょう。
①「ハーバード大学図書館」のトップページを開きます。
https://library.harvard.edu/
サイト上でマウスを右クリックして「日本語に翻訳」を選択すると、英語のサイトが自動翻訳で日本語になります。
②トップページの検索窓で「Hokusai manga」と検索します。
③検索一覧ページの右上フィルターで「in library」(=図書館内)を選択します。
この絞り込みにより、ハーバード大学図書館所蔵のみが表示されます。

④さらに検索一覧ページの右上フィルターで「online」(=オンライン)を選択します。
この絞り込みにより、ハーバード大学図書館所蔵のパブリックドメインの『北斎漫画』の一覧が表示されます。

⑤一覧から、閲覧したい本をクリックします。
11件の検索結果のうち、一番上がハーバード大学図書館が所蔵する全九編分のリンク先一覧ページです。その下に、編ごとのページが並んでいます。

ここで注意すべきは、クリック箇所です。閲覧ページに進むには、タイトルの箇所ではなく、青ラベルの「online access」の箇所をクリックする必要があります。
一覧上のリンク先一覧ページ(https://listview.lib.harvard.edu/lists/drs-499504334)に進んでから、各編のリンク先に進む方法をおすすめします。
⑥使用したいページの画像をクリックし、ダウンロードします。
ダウンロードボタンは右上にあります。画像サイズを選択し、画像を保存します(マウス右クリックで「名前を付けて保存」)。

⑦クレジット(出典)を記載して、画像を使用します。
5.厳選26枚が1枚絵に!ビジュアル利用に最適な「ニューヨーク公共図書館」
『北斎漫画』全十五編に収録された絵は、約3,900点に及びます。「数は少なくていいから、厳選された絵の中から直感的に選びたい!」――そんな場合におすすめなのがニューヨーク公共図書館です。
アメリカにあるニューヨーク公共図書館は、収蔵品が5,300万点を超える、世界有数の規模を誇る公共図書館です。
インターネットでの発信にも積極的で、「ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション」として18万点以上のパブリックドメイン作品を公開しています。これらは自由にダウンロードして利用でき、商用利用も可能です。
また、筆者が知る限り、自由にダウンロードできるアーカイブの中で、歌川広重の『東海道五十三次』の全地域が揃っているのは、このニューヨーク公共図書館デジタルコレクションだけです。
「ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション」の特徴と注意点
厳選された絵の中から、『北斎漫画』のビジュアルを直感的に選べるアーカイブとして、ニューヨーク公共図書館デジタルコレクションは次のような特徴があります。
- 『北斎漫画』で特に人気の高い十二編(1冊分)の中から厳選した26枚を、1枚絵として公開
- 検索一覧画面から直感的に絵を選べるため、編ごとに開いてページを探す必要がない
- 見開きページを1枚絵として加工しており、ビジュアル利用に最適
- ダウンロード画像は9種類のサイズから選択可能
- 彩色はないものの、線のかすれもなく色味が鮮明で、画像の質は非常に良い
- 商用利用を含め自由に使用できる
このアーカイブで入手できるのは『北斎漫画』全十五編のうち、十二編のみですが、『北斎漫画』で最も評価が高いのがこの十二編と言われています。イメージ的に『北斎漫画』の絵を紹介する用途であれば、評価の高い26枚に厳選されていることは、むしろ大きなメリットです。
実際、筆者が『北斎漫画』の解説記事で選んだ画像や、候補にした画像もこの中に多く含まれています。この記事のトップ画像もニューヨーク公共図書館デジタルコレクションの絵を使用しました。他にもたとえば次のような絵が公開されています。

出典:葛飾北斎『北斎漫画』十二編、ニューヨーク公共図書館
https://digitalcollections.nypl.org/items/d48b52c0-801e-0133-98e5-00505686d14e?canvasIndex=0
ダウンロード時には9種類のサイズを選べますが、一般的な利用であれば「standard」を選べば十分です。1枚絵として使える利便性の高さや画像の質の良さも、ニューヨーク公共図書館デジタルコレクションの魅力です。
『北斎漫画』の検索・ダウンロード手順
では実際に、「ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション」で『北斎漫画』の作品画像を利用する手順を確認してみましょう。
①「ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション」のトップページを開きます。
https://digitalcollections.nypl.org/
サイト上でマウスを右クリックして「日本語に翻訳」を選択すると、英語のサイトが自動翻訳で日本語になります。
②トップページの検索窓で「Hokusai manga」と検索します。
その際、検索窓の下の「Search only public domain」にチェックを入れて検索すると、パブリックドメインのみの絞り込み検索ができます。チェックを入れることをおすすめします。

③一覧から、閲覧したい画像の項目をクリックします。
下の画像のように、一覧画面で絵を見てイメージで選ぶことができます。

④画像をダウンロードして、クレジット(出典)を記載して使用します。

ダウンロード画像はサイズを選択し、マウスを右クリックで「名前を付けて保存」を選択します。
歌川広重『東海道五十三次』をはじめとする浮世絵を利用したい場合は、次の記事の「ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション」の利用手順を参考にしてみてください。
【まとめ】5項目でチェック!『北斎漫画』アーカイブ比較と補足情報
ここまで『北斎漫画』の無料閲覧・ダウンロード先として、5つのデジタルアーカイブの特徴や注意点、利用の手順を紹介してきました。
紹介の順番はおすすめ順ではなく、収録編数が多いものから目的別の利用に便利な順を意識しています。筆者が実際に『北斎漫画』の画像を揃える際に、各アーカイブを巡回して試行錯誤した経験をもとに、できる限り有益な情報としてまとめました。
『北斎漫画』の画像利用は、目的によって最適なアーカイブが異なります。そこで、判断基準となる5項目を比較した表を作成しました。特に強調したい項目は太字で示しています。
| アーカイブ先 | 収録編数 | 商用利用 | 探しやすさ | 画像の質 | 他の北斎作品 |
| 国立国会図書館 | 〇(全編) | 〇 | 〇 | △(彩色なし) | △ |
| 大英博物館 | 〇(十三編以外) | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
| メトロポリタン美術館 | 〇(全編) | 〇 | × | 〇 | 〇 |
| ハーバード大学図書館 | △(九編分) | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
| ニューヨーク公共図書館 | △(厳選26枚) | 〇 | 〇 | 〇(彩色なし) | △ |
利用する際は、各サイトの利用規約を守り、作品への敬意を持って、自己責任で行ってください。
その他の閲覧先
今回は紹介から外しましたが、シカゴ美術館コレクションも注目のアーカイブです。2025年9月時点では『北斎漫画』の絵はわずか3枚のみの公開ですが、画像のクオリティは非常に高く、他の絵も所蔵されている可能性が高いと考えられます。また、公開準備中の作品も多く、将来的には『北斎漫画』のおすすめサイトになる可能性があります。
シカゴ美術館コレクションの閲覧方法はこちらの記事をご覧ください。
さらに、種類が多いため選ぶ手間はかかりますが、『北斎漫画』全十五編を収録した書籍も数多く存在します。たとえば「Kindle Unlimited」の利用者であれば、電子書籍で無料閲覧できるものもあります。全編を一気に閲覧したい場合や、ストレスなく絵を確認したい場合は書籍の方が便利です。
ここで紹介したアーカイブや方法が、『北斎漫画』の作品に触れたり活用する際に役立てば幸いです。
『北斎漫画』の基本情報や北斎の浮世絵作品の画像利用、パブリックドメイン作品の活用について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
●【『北斎漫画』入門】葛飾北斎が描いた「現代マンガ」のルーツと魅力を解説
●【浮世絵ダウンロード先4選】北斎・広重の代表作が無料利用できる美術館サイトを徹底比較
●【パブリックドメインの活用法】著作権切れの書物や浮世絵画像の入手方法と使用のルール
● 画像利用で著作権侵害を防ぐためのチェックリスト【複製・転載・引用の手引き】
●【二次創作×著作権】記事リンク集|著作権フリー活用ガイド
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