【パブリックドメインの活用法】著作権切れの書物や浮世絵画像の入手方法と使用のルール

昔の書物(本の挿絵等)や浮世絵画像をネット上で正しく効率的に入手するには? そこにはどのような使用のルールがあるのか? 

実践をもとにした一連の入手プロセスやノウハウを、押さえておくべき著作権ルールと共にまとめました。

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パブリックドメイン画像とは?

あらゆる創作物に与えられている著作権(作品が保護される権利)は、個人の著作物の場合は「著作者の死後70年」、団体名義の著作物の場合は「その著作物の公表後70年」が経つと権利が消滅し、誰もがその作品を自由に使用できるようになります。

こうして期間が満了し著作権がなくなった作品は、著作者自らが権利を手放した作品と共に、一般的には「著作権フリー」もしくは「パブリックドメイン」と呼ばれています。

大きなくくりではどちらも同じ意味で使われていますが、著作権フリーという言葉は、権利期間が満了した作品に限らず著作者が自由に使ってよいと定めたフリー素材などを指して使われることが多く、パブリックドメインは広く公開されるべき公共物という価値観のもと、主に著作権が消滅した昔の創作物に対して使われる傾向が強いように思います。

今回この記事で対象とするのは、ネット上で日々数を増しているパブリックドメイン画像(著作権が消滅したパブリックドメイン作品を画像として公開したもの)であり、その活用法です。

方法1から3に進むにつれて、より幅広い分野のパブリックドメイン画像を検索とダウンロードのみで入手できるよう手順を示しています。

【方法①】フリー素材サイトを活用

江戸時代の有名な浮世絵をはじめ、著作権切れの作品画像をwebサイトなどの広報物に使用している事例をよく見かけます。

例えば自分のサイトにカラフルな浮世絵をイメージ画像として掲載したいと思った場合、「パブリックドメイン 浮世絵」や「フリー素材 浮世絵」などのキーワードで検索すると、様々なフリー素材サイトを見つけることができます。

それぞれのフリー素材サイトに書かれた利用のルールを守ることを原則に、使いたい画像をダウンロードします。基本的には商用利用を含めて二次利用が可能です。

ちなみにこの記事のトップ画像は、葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』シリーズの「凱風快晴」(通称富士山)です。ダウンロード先のシカゴ美術館コレクションでは、シカゴ美術館が所有する10万点近くのパブリックドメイン作品(日本の作品は浮世絵を中心に1万点以上)を画像として公開し、二次利用を認めています。

フリー素材サイトの問題点

このようにネット上で著作権フリー画像やその入手方法について調べると、様々なフリー素材サイトや美術館サイトなどを紹介した記事がたくさんヒットします(むしろそればかりです)。

こういった素材サイトは閲覧するだけでも楽しく、ざっくりしたイメージでお気に入りの絵柄を選ぶには非常に便利です。

しかしいざ目的に沿ってお目当ての画像を探すとなると、使いたい画像がそれほど有名ではなかったり対象が具体的(逆に作品名等の知識が曖昧)であるほど、ピンポイントで見つけることが難しくなります。

なぜなら著作権切れの作品は世の中に膨大にあって、そこからフリー素材サイトのような場所に掲載されるものはごく一部にすぎないからです。過去一定の年数が経った作品のほとんどが該当する「著作権切れの作品」からふさわしいものを選ぶのに、素材サイトに限界があることは想像に難くないと思います。

これは私の実体験ですが、同じ浮世絵でも「とある偉人の肖像画を使用したい」「とある本の表紙やその挿絵を使用したい」といった場合に、フリー素材サイトはほとんど役に立ちませんでした。

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【方法②】Googleの画像検索を活用

そこでフリー素材サイトが目的に合わない場合の次の手段として、画像オールジャンルで最も広く活用されているのがGoogleの画像検索機能です。

Googleの検索窓に「著作権フリー 〇〇」「フリー素材 〇〇」などのキーワードを入力して画像検索すると、関連の画像がずらりと出てきます(ちなみにYahoo!検索もGoogleの検索エンジンを使用しているので、同じような検索結果になります)。

しかしここに検索結果として出てくる画像には、実際には著作権フリーではない画像が多く含まれているので注意が必要です。必ず画像のリンク先をたどって権利関係を確認する必要があります。勝手に使用して権利を侵害してしまい、トラブルになるケースも多発しています。

また、先ほどの「葛飾北斎」や「富嶽三十六景」のように、その作者が70年以上前に亡くなっていてその作品がすでに著作権切れであることが明らかならば、検索で「著作権フリー」のようなキーワードは不要です。

画像検索の手順

①Googleで画像検索
例えば「東海道中膝栗毛」をGoogleで画像検索すると、次のように関連画像がひたすら画面上に続いていきます。これを見るだけでも、どのような画像があるのか全体像が掴めます。

②画像を選ぶ
これらの関連画像のうち、「東海道中膝栗毛」に関する記事で広く使用されている代表格が、弥次さん喜多さんのアイコンが2つ大きく並んだ次のような画像(江戸時代の本の挿絵)であることが分かりました。

検索でめぼしい画像を探した結果、この画像にターゲットを絞ります。ちなみにここでは作品名で検索しましたが、著作権の切れた偉人の肖像画を探すような場合にもGoogle画像検索はとても便利です。

③出典元を確認
各画像下の文字の部分(記事名)をクリックすると掲載元のサイト(該当記事)が見られます。必ずそのページを開いて画像の出典元を確認します。

例えばウィキペディアに掲載された写真は、必ずその画像の下に出典元のリンクを貼って、すべて情報源をたどれるようにしています。これはパブリックドメインに限らず第三者の画像を使用する場合の引用やライセンスといったルール上の話になってきますが、ウィキペディアは出典を示す1つの事例としてとても参考になります。

個人ブログなど出典を書かずに画像転載しているサイトも多いので、同じ画像が使われている他のサイトも順に見ていくと、その画像情報が明らかになっていきます。

いくつかのサイトをたどった結果、例の弥次喜多画像は『東海道中膝栗毛 発端』(江戸後期の文化11年刊行)の挿絵であることが分かりました。

④大元のサイトで画像をダウンロード
どこからきた画像なのか大元のサイト(所蔵先)を探して、利用のルールを読んだ上で、その画像をダウンロードするなりして使用します。

この大元のサイトというのは、たいていはデジタルアーカイブが該当します。

詳しくはこの後で順を追って説明していきますが、この段階で重要になってくるのが、「パブリックドメイン」「デジタルアーカイブ」「オープンデータ」という公有の知的資源を対象にした3つの概念と、それら作品や情報の公開先が示したライセンス、いわゆる利用のルールです。

パブリックドメイン画像と利用のルール

パブリックドメイン(public domain)とは、著作物や発明などの知的創作物について、知的財産権が発生していない状態または消滅した状態のことをいう。日本語訳として公有(こうゆう)という語が使われることがある。

ウィキペディア「パブリックドメイン」

デジタルアーカイブとは、あらゆる知的資源を対象とし、その所蔵及び利用機関は文書館・公文書館・資料館・博物館・美術館・図書館等にとどまらないものである。知的資源をデジタル化し公開することによって、ネットワーク等を通じた利用も容易となる。

ウィキペディア「デジタルアーカイブ」

オープンデータ(Open Data)とは、特定のデータが、一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が望むように利用・再掲載できるような形で入手できるべきであるというアイデアである。

ウィキペディア「オープンデータ」

ネット上で広く出回っている著作権切れの作品画像は、元をたどれば原本や原画などの所有者が利用のルール(たいていはクレジット表記の条件)を示した上で、デジタルアーカイブなどの方法でオープンデータ化したものです。

かつて存在した作品であっても、その作品を所持し受け継ぐ人がいなければ、”未来の私たち”がそれを自由に使うこともできなければ公開されることもありません。

美術館に飾られた絵画がイメージしやすいと思いますが、著作権切れの作品であっても、その作品の所有者には所有権が存在します。そして現物を所有している人(たいていは公的機関)がパブリックドメインであることを理由に画像としてデジタル化し、ネット上で公開しているからこそ、巡りめぐってGoogleの画像検索で多くのパブリックドメイン画像が閲覧できるというわけです。

よってパブリックドメインの作品を使用する上で、情報源を示したクレジット表記は非常に重要です。

また、上に示したような書物画像はクレジット表記が必要な場合がほとんどであるのに対し、浮世絵のような1枚絵は有名であるほど同じものが数多く出回っているため、入手先によって様々なケースが想定されます。それを確認する意味でも、所有先をたどって利用のルールを確認した上で画像を使用することが重要です。

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【方法③】図書館のデジタルアーカイブを活用

こうしてGoogle検索を入口に様々な昔の画像を閲覧していると、あることに気づきます。それは書物に関する画像も浮世絵画像も元は紙の出版物だということです。

現存する”昔の出版物”を広く収蔵しているのは主に図書館です。公開規模は違えど多くの図書館は著作権が消滅したパブリックドメインの作品をネット上でデジタルアーカイブとして公開し、商用利用も含めて誰もが二次使用できるようにしています。

そして出版物の所蔵において代表格といえるのが、日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存することを定めた日本唯一の法定納本図書館である国立国会図書館です。

国立国会図書館デジタルコレクション

国立国会図書館は、著作権の消滅したパブリックドメインの出版物を公式サイト上で「国立国会図書館デジタルコレクション」として中身をすべて閲覧できる形で公開し、「インターネット公開(保護期間満了)」と書かれているコンテンツは出典を記載することを条件に自由に利用できるようにしています。

国立国会図書館デジタルコレクション
国立国会図書館で収集・保存しているデジタル資料を検索・閲覧できるサービスです。 このうち、著作権保護期間が満了した資料、著作権者の許諾を得た資料等については、インターネットを通じて本文の画像を公開しており、どなたでもご自身の端末で利用することができます。

国立国会図書館サイトより

国立国会図書館サイト > webサービス一覧 > 国立国会図書館デジタルコレクション

国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

①キーワードを入力して検索
デジタルコレクションのページから「東海道中膝栗毛」を検索すると、なんと11,309件(さらに「道中膝栗毛」では16,385件!)もの該当作品が一覧表示されました。

そこからさらに「図書」「雑誌」「刊行年」など様々な絞り込み検索ができます。今回は「東海道中膝栗毛 発端」で検索して、すぐに該当の書籍が出てきました。

②目的の書籍を閲覧
該当書籍の箇所をクリックすると、その本すべてのページが画像として一覧表示されます。Google画像検索でたくさん表示されていた例の弥次喜多画像がすぐに見つかりました。

東海道中膝栗毛 発端 – 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

③利用のルールを確認し、画像をダウンロード
このページをそのまま下にスクロールすると、左側に書籍情報、右側に共有情報として「インターネット公開(保護期間満了)」の記述があります。「コンテンツの転載について」をクリックすると、ダウンロードして使用する場合のクレジット表記のルールが書かれています。

さらにその下にダウンロードボタンがあります。

④クレジット(出典)を記載して使用
このように画像の下にクレジット表記した上で、サイト上で画像を使用しました。

『東海道中膝栗毛. 発端』国立国会図書館デジタルコレクションより

他にも一枚物の絵図として「東海道中膝栗毛」の双六をダウンロードして使用するなど、国立国会図書館デジタルコレクションを素材サイトのように駆使して、記事に掲載する画像として使用しました。

この双六は私が使用するまでGoogle画像検索でも目にしたことのなかった画像です。記事への導入として一役買っています。

『浮世道中膝栗毛滑稽双六』国立国会図書館デジタルコレクションより

このように図書館のデジタルアーカイブには、Google画像検索にはまだ出てこない膨大なパブリックドメイン画像が存在しています。

地方図書館のデジタルアーカイブ

国立国会図書館の蔵書も万能ではありません。特にローカル色の強い出版物ほど、その地域の図書館にしか所蔵されていないことが多々あります。

例えば「東海道中膝栗毛」は弥次さんと喜多さんが江戸を出発して東海道から伊勢神宮に参拝し、さらに京都と大阪を旅する全八編のシリーズ作品であり、大阪編の刊行年が古いバージョンは国立国会図書館にはなく、「大阪市立図書館デジタルアーカイブ」に所蔵されています。

デジタルアーカイブについて
大阪市立図書館デジタルアーカイブとは、大阪市立中央図書館が所蔵している古文書や写真、絵はがき、地図などの貴重資料の画像閲覧サービスです。
キーワード(資料名、著者名、地域名など)や出版年、文書種別(写真・絵はがき等)から資料を探すことができます。

大阪市立図書館サイトより
大阪市立図書館 デジタルアーカイブ (osaka.lg.jp)

基本的な使い方は同じです。キーワード検索で該当書籍をクリックすると、国立国会図書館と同様に1冊全ページの画像一覧と書籍情報・共有情報が出てきます。

そこに「申請不要・二次利用可」の項目があり、「二次利用について」をクリック→「オープンデータについて」をクリックすると、ダウンロードして使用する場合のクレジット表記のルールが書かれています。

ただしここで検索の大きな落とし穴が、大阪市立図書館デジタルアーカイブは「東海道中膝栗毛」ではなく「道中膝栗毛」で検索しないと、古い刊行年の本が検索にひっかからないことです。

なぜなら「東海道中膝栗毛」は最初からこのタイトルだったわけではなく、「道中膝栗毛」や「膝栗毛」をメインタイトルに、長い歴史の中で「東海道中膝栗毛」に集約された経緯があります。

検索にはこのような知識が多少必要になることがあります。

『道中膝栗毛八編』大阪市立図書館デジタルアーカイブより

大阪市立図書館デジタルアーカイブには、国立国会図書館にはない大阪ならではの貴重な出版物がたくさんデジタル公開されています。

「東海道中膝栗毛」に関するコンテンツを作るにあたって、国立国会図書館デジタルコレクションと大阪市立図書館デジタルアーカイブを用途に応じて使い分けて、大いに重宝しました。

パブリックドメインの作品利用において、クレジット表記のルールは共通ではなく、所蔵先(デジタルアーカイブ)ごとにも、場合によっては使用する画像ごとにもそれぞれ異なります。必ずそれぞれの利用のルールを読んだ上で、そのルールを守った上で画像を利用しましょう。

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まとめ パブリックドメインの活用法

①フリー素材サイトを活用
「パブリックドメイン 〇〇(例:浮世絵)」や「フリー素材 〇〇」などのキーワードで検索すると、様々なフリー素材サイトを見つけることができます。そこには一見豊富なフリー素材が存在しますが、膨大なパブリックドメイン画像の中でフリー素材サイトに掲載されるものは非常に限定的です。

浮世絵の場合は、フリー素材サイトより先に美術館のデジタルアーカイブを当たってみることをおすすめします。

②Googleの画像検索を活用
Google画像検索は検索1つでそのまま自由に使える画像に行き着くことは稀ですが、知りたいワードで検索してどのようなパブリックドメイン画像があるのかを知り、当たりをつけるのに非常に便利です。ただし幅広い関連画像が一覧で出てくるので、必ず掲載先のサイトを見て権利の所在を確認することが重要です。

③図書館のデジタルアーカイブを活用
パブリックドメイン画像の元の姿が出版物である場合は、図書館のデジタルアーカイブを活用するのがおすすめです。Google検索では出てこない膨大なパブリックドメインの作品を画像としてダウンロードして自由に使用できます。

最後に大切なこと
パソコンの前に座って検索するだけで、これだけの幅広い作品収集ができてしまう便利な時代です。ただし便利である分、他人の画像を無断で簡単に転載できてしまいます。

どのような方法で画像を入手したとしても、そのダウンロードサイトに書かれた利用のルールを読んだ上で、そのルールを守って画像を使用する必要があります。

今世の中にあふれている作品群もほとんどが、将来的には著作権が消滅して”フリー素材”と化します。自分たちの創作物を受け継ぐためのマナー、創作者への尊厳や配慮を持ち、すべての作品が大切に扱われることを望んでいます。

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